【後編】原油価格が下がるとなぜ世界は混乱するのか? ~コロナウイルスに続き、金融面からもショックが来るかもしれない~
後編です。
前編では、原油価格があまりに下がると、
・その他のエネルギー産業がピンチになる
・産油国も採算が合わなくなる国が出てくる
という部分について触れました。
fp-futurevision.hatenablog.com
後編では、産油国のオイルマネーが世界に与えている影響、産油国に留まらない原油価格の影響などについてです。
原油価格があまりにも下がり、産油国の情勢が厳しくなると、以下のことが予想されます。
①産油国の資産運用・投資マネーが細る、さらには引き上げに周る
産油国の王道パターンは、原油で稼げているうちに、そのお金を資産運用に回して、遠い将来に採掘が細り始めた際にも安定的に国に収益が入り続けるように準備をしています。
この投資マネーは、様々な分野に渡ります。
例えば、ソフトバンクのビジョン・ファンドの第一号に大きく資金を投じたのは、サウジアラビアとUAEでした。この2カ国関連からで、半分以上を占めます。
原油安での国家間のチキンレースに備えて、オイルマネーという巨額資金が引き上げつまりは株式や債券の解約に周ると、さらに下落に拍車がかかります。
②産油国自体に異変が出てくる
中東やロシアは現在の23ドル程度で耐えきれても、北米・南米・北欧は非常に厳しい状況で、おそらくマイナスでしょう。
ベネズエラのような経済崩壊にならなくても、通貨下落や債券価格の定価での資金調達の困難さが出てきます。
事実、円ベースでカナダドル・メキシコペソ・ノルウェークローネを見てみると、今現在凄まじい円高です。
メキシコペソ・ノルウェークローネや、ロシアルーブルはおそらく歴代最安値(対円)ではないでしょうか。
③石油以外のエネルギー産業がやられる
他の高コストとなるエネルギーとの闘いで、特に米国のシェールガス関連会社は大打撃を受けるでしょう。
事実として、米国ハイイイールドボンドの価格下落(破綻懸念)が進んでいます。
High Yield Bond、つまりは高利回りの債券です。
高利回りなわけなので、格付けはBBB以下の会社になります。
元々ハイイールドボンドは株式に近い動きになるものですが、下落幅が大きくなっています。
フィデリティ・ハイ・イールド・ボンド・オープン ポートフォリオ A(為替ヘッジなし)
※割合でエネルギーが14%と最も高い
④エネルギー関する会社の不振と株価の下落
石油は産油国だけの事業ではありません。
運航停止が相次ぎ航空会社がピンチになると、釣られてボーイング社やエアバス社も大幅下落します。
このように、例えば日本の総合商社でもエネルギー事業は大きな事業割合であり、事業収益性の先行きが怪しくなるのです。
(もっとも、現在は全ての株は既に原油安など関係ない部分で下落中です)