【前編】原油価格が下がるとなぜ世界は混乱するのか? ~コロナウイルスに続き、金融面からもリーマンショック級のものが来るかもしれない~
原油価格が大幅に下がっています。
大きな理由としては、3月6日にサウジアラビアとロシアで、厳密には石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの非加盟国で、減産(産油量を減らして原油価格を上げる)についての合意が取れなかったからです。
日本経済新聞:OPECと非加盟国、減産強化で合意できず ロシア抵抗
コロナウイルスと原油は直接の関連ではないのですが、この原油価格下落もまた世界の資産運用に影響を大きく与えています。
なぜでしょうか。
原油価格はプラスチックなど化学製品はもちろんのこと、燃料として全ての物流に関わる(車・飛行機・船)ので、一般的に原油価格が安くなるほど、モノの価格は安くなります。
基本的にはこれは経済にはプラス要素です。
しかし原油価格が下がりすぎた今回の場合、大きく2つの問題が出てきました。
①その他のエネルギー産業がピンチになる
エネルギー源は原油だけではありません。
天然ガス、シェールガス、オイルサンド、石炭、と様々なものがあります。
ただ基本的には原油が一番簡単な(コストが低い)ため、原油の価格が下がると、石油産業は採算が取れても、他のエネルギー産業は採算が割れるという問題が出てくるのです。
特にシェールガス関連は米国企業が多く、多くの債券を発行しています。
これが高い利回りのハイイールド債券に分類されることが多く、それを組み込んだ資産運用商品に不安が生じてきます。
②産油国も採算が合わなくなる国が出てくる
ベネズエラで特に2018~2019年にかけて何が起こったか、ご存知の方も多いでしょう。
正真正銘のハイパーインフレです。
インフレ率が何十万%という、もはや全く理解できない次元のパーセンテージになっています。
日本経済新聞:ベネズエラ、インフレ率81万% 4カ月連続で減少も
為替は短期間で1/3程度になり、GDP成長率が前年度比-39.9%と、全てに急ブレーキがかかりました。
JETRO・ジェトロ:規制緩和でドルやユーロなどの外貨利用が浸透、通貨下落の加速も(ベネズエラ)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/10/1fecf30ac46719b5.html
JETRO・ジェトロ:ベネズエラの第1四半期GDP成長率は前年同期比マイナス39.9%
https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/07/c1cdffe4afafc2dc.html
この状況は今現在も続いています。
なぜこのような事態になってしまったのか。その大きな理由が、ベネズエラが産油国であり、輸出・外貨獲得のほぼ全てを石油に依存していたからです。
このため原油価格が下落し、ベネズエラの採掘コストで採算が合わなくなると、瞬時に国が崩壊してしまいました。
一般財団法人 日本エネルギー経済研究所
「国際原油市場を取り巻く環境と価格形成に影響を与える諸要因に関する調査報告書」
平成29年2月(平成28年度石油産業体制等調査研究)
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000619.pdf
レポート内5ページに、各エネルギー産業の生産コストの図が載っています。
80ページ以降は、各国の採掘コストや国の石油への依存度、1998年のロシアショック(資産運用業界にはLTCMの破綻)、ベネズエラの事例が載っています。
原油市場を理解するに、非常に良い調査報告書だと思います。